世界遺産を身近に感じた紀伊半島

神倉神社 と つぼの湯




 2015年1月12日、長男が成人式を迎えた。このHPを立ち上げた頃、息子はまだ幼稚園児で、この子の子守を兼ねて私の趣味であるアウトドア旅日記を綴ってきたが(本当は子守を口実に好き勝手に遊んできたのでは?という声が聞こえてきそうだが・・・。)、その息子も今は大学生である。長かったようでもあり、あっという間のことのようでもあり、嬉しいようでもあり、ホッとするようでもあり、またなんとなく寂しいようでもあり・・・。ほんと複雑な心境というのはこういうことをいうのだろう。まだまだすねかじりの未熟な息子ではあるが、二十歳を迎えたことは紛れもない事実である。おめでとう、そしてこの先も幸せあれ。

 ということで成人式を済ませた息子を、翌日に休みを取って大学の寮まで送る。甘やかしかもしれないが、息子は新年早々に体調を崩してウンウンうなっていたので、今回は大事をとって送ってやることにした。実はこれも口実であって、息子を送り届けた後、私は自由の身となる(笑)。つまり車中泊をすれば、翌日は完全に私のものである。ということで、息子を送り届けた後、私の定宿である伊勢自動車道の多気パーキングで車中泊をする。

 早朝に爽やかに目覚める。昨夜は一人宴会をしていたが、車中泊をしているのは私一人。トラックも止まってないので非常に静かで、ぐっすり眠れた。ダウンシュラフのおかげで寒さも感じなかった。しいて言えば、安酒がちょっとばかり残っているかなあ。まあ絶好調のスタートである。おもむろに「特性ニシン昆布巻きキツネ煮込み味噌うどん」を作る。最近は便利なインスタント食品が多いので、それらをなんでもかんでも放り込んだらできあがる。この季節の朝食はこれが一番である。十分に腹ごしらえを済ませて、いざ出発!

車中泊しているのは私一人・・・。

特性ニシン昆布巻きキツネ煮込み味噌うどん



 今回の目的地は熊野速玉大社の摂社「神倉神社」である。昨年この熊野三山の一つである熊野速玉大社を参拝して「釣り守り」を見つけてから、何と尺1寸という大岩魚を釣り上げた。そして型こそ小さいものの、チヌを3枚釣った。これを御利益と言わなかったらバチが当たるというものだ。まずはそのお礼に熊野速玉大社に詣で、そしてそのご神体が降臨するという神倉神社に更なる御利益をお願いするために、参詣することにした。なんとも厚かましいお願いだが、めざせ、尺2寸!! まあ飽くなき向上心がこの上なく旺盛・・・ということにしておこう。決して欲張りではない(笑)。

 尾鷲まで紀勢自動車道を走る。片道1車線の高速道路ではあるが、奥深い紀伊半島をずいぶん切り開いたものだ。おかげで順調に熊野速玉大社へたどり着く。私にとって、いまだかつてこれほど霊験あらたかな神様は他にはない。本殿はもちろん、すみずみのお社すべてに丁重にお参りする。そして今年もお守りを頂くことにする。ところが無いのだ。何度も目を皿のようにして探すが見あたらない。何となく嫌な予感がする。もし手に入らなければ、私の釣果はきっとどん底まで落ちるに違いない。そこでとっても綺麗な巫女さんに尋ねてみたところ、ちょっとお待ちくださいということで奥から出してきてくれた。あー、良かった。まだまだ私の運も尽きてはいないようだ。有り難く購入させていただく。

熊野速玉大社  今年も大漁でありますように。



 そのあと、すぐ近くにある神倉神社へ向かう。噂には聞いていたが、鳥居からいきなり強烈な石段が目についた。この石段は、源頼朝が寄進したと伝えられ、敷地内は世界遺産の一部になっている。そして山頂にはゴトビキ岩と呼ばれる巨岩が鎮座しており、これこそが神様が降臨するご神体である。登り初めてまず感じたことだが、いまだかつてこれほどの急勾配の階段は経験したことが無いのではなかろうか。なんせ目の前に石段があり、手で掴めそうな距離である。階段というより、梯子の感覚か。もちろんそれは極端な表現ではあるが、それほどの急勾配そして悪路である。うちの鬼嫁や娘なら、おそらくゴムまりのように転げ落ちるだろう。息を切らしながら500段を越える石段を登り切ると、ついに巨岩が姿を現した。日本の神様は実態が無く目に見えない存在である。それが山や岩、木などに宿るそうである。こんな巨岩に宿る神様は、さぞかしありがたい神様に違いない。今後の私の釣果と無事を願って、普段の10倍の賽銭を奮発する。といっても50円だが。ここから見える紀州の海は絶景で、ほんと心が洗われる。空は快晴で、しばらくの間飽きることなく海と巨岩を眺めていた。

神倉神社入り口

凄まじい石段


ご神体の巨岩



 さて、前回は紀伊半島を一周するために潮岬を目指したが、今回は紀伊山地を縦断することにする。恥ずかしながら私は有名な観光地である瀞峡を知らない。だからここから北上するコースをたどる。だだっ広い河原を持つ熊野川に沿って北上するが、やっぱりスケールが違う。川に観光船を浮かべて景色を楽しむことができるのは、やはりこれぐらいのスケールがあってこそだと思われる。途中で「道の駅 瀞峡街道熊野川」という看板を見たので立ち寄ったが何もない。トイレだけの道の駅なんて初めて見た。ということで、拍子抜けというより半ばバカにされたような気がしていたが、後で知ったのだがあの平成23年の台風12号の被害を受け、今は休止しているという。そういえば被害にあった方々の名前を刻んだ慰霊碑があったことを思い出した。熊野川が氾濫して、おそらくあのあたりに大被害をもたらしたのであろう。誠に不埒なことを考えていた不謹慎な自分を、心から恥じ入った。


 しばらく走ると何故か非常に心惹かれる店があった。この道は全く初めて通る道なのに、何故か懐かしさを覚える不思議な魅力があった。お世辞にもお洒落な店なんて言えないどころか、毒々しい黄色とベタベタした張り紙にセンスの悪さを感じる。だが立ち止らずにはいられない何かがある店だった。1階はラーメン屋、2回は安宿といった出で立ちである。だが腹も減っていたので、この店で昼食をとることにする。名前は「黎明」、熊野古道らしいロマンを感じるが、それはあくまでも名前だけであって、外観からは全くロマンが感じられない。そして注文したのはラーメンと焼き飯のセット。世界遺産には程遠い昼食となった。ラーメンは特に美味いとは思わなかったが、チャーハンは旨かった。さておあいそをする段になって、ふと壁に貼り付けられてある紙を見て、全てが理解できた。そこにはテレビ番組「ちちんぷいぷい」河田さんとくっすんの写真が貼ってあったのだ。実際は去年の6月に訪れたらしいが、正月番組の特番でもその総集編をやっていたが、そこで見たそのお店だったのだ。どこかで見たことがあるというのは、そのテレビ番組で見たのをおぼろげながら覚えていたのだった。テレビで見た通りの、とっても気さくなご主人と奥様がきりもりされていた。

これが 「黎明」 !



 その後、今回のもう一つの目的地、湯の峰温泉へ向かう。ここは今までに2回ほど行ったことがあるが、温泉に入ったのは1度だけである。だが前回入ったのは公衆浴場であって、ここの本当の温泉「つぼ湯」にはまだ入ったことがない。というのはこれは世界遺産の一部であり、当然ながらものすごく人気が高い。そして小さな穴の温泉なので、一度に入れるのは2~3人がせいぜいである。30分交代になっているが、長い順番待ちになるので今まで入ったことはなかった。今日は平日なので、期待大である。駐車場に車を止めて受付に行くと、今日は15分ほど待てば入れるとのこと。このチャンスを逃せば、次はいつ来られるかわからない。今日はついているようだ。ついているといえば、今日はたまたま月1回のイベントで、近くの旅館の女将達が無料でコーヒーをサービスしてくれる日ということである。入浴前にコーヒーをいただいて、そして世界遺産の湯を独り占めする。小さな小屋の板の隙間から燦々と陽がさし、一日に何度も色が変わるという温泉に浸る。私が入った時は、きれいな水色の、しかも透明な湯が溢れていた。昨日の車中泊でちぢこまっていた体を、目一杯伸ばす。上がったあとは、異様に下半身が軽く感じられた。そしてすっと目の前が明るくなったような気がした。これぞまさに「黄泉がえり」かもしれない。熊野の旅は蘇りの旅と言われている。 今の時代ならリフレッシュと言うのかもしれないが、そんな言葉ではどうもしっくりこない。決してそんな軽々しいものではなく、まさに生命を揺り戻すかのような、そんな心と身体を取り戻せる旅のような気がした。

世界遺産の つぼ湯

これぞ 世界遺産の湯 !



 いよいよ帰り道である。十津川を縦断し、奈良県の五条を目指す。このあたりも大きな被害を受けたところだが、以前来たよりもかなり道路が整備されていた。と言ってもまだまだ途中経過の段階で、奥深い山の秘境であることに変わりはない。嫌になるほど延々と山道を走り、あとは高速道路で帰路を急ぐ。途中で奈良県の名産「柿の葉寿司」を土産に買った。これはとっても美味い。誰もが喜ぶ土産である。まあ一人で世界遺産を満喫した旅のおすそ分けをすることによって、みんなに幸せを分けてあげよう・・・・・。というか、本音はみんなの羨望、怒りの矛先をこれによってそらせよう、というのが目的である。 なんせ一人で好き勝手に遊んできたのだから(笑)。

 



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