初乗り
 で 初詣
(250TRデビュー)


 相棒がKAWASAKI 250TRに代わって最初の週末、やはり乗らずにはいられるわけはない。幸い取り立てて用事もないし家族も快く了承してくれたので、日曜日に初乗りをすることにした。暦の上では春かも知れないが、まだまだ肌寒いので、近場の丹波地方散策ということにした。今回は行き先よりも、新しい彼女に慣れることを優先する。


 彼女はまだまだ慣らしの状態なので、じっくりと優しく接してやる。(なんかヤラシイ言い方やなあ…。)まずは丹波一宮『出雲大神宮』を目指す。ここは以前にも来たことはあるのだが、つい先日、たまたま兼好法師の徒然草に接する機会があったので、また行ってみたくなったのである。


 その第二百三十六段に「丹波に出雲というところあり。」から始まる文章がある。 その中に出てくるのだが、当時、この地域を治めていた「志太の何某」という人物が島根の出雲大社の神霊を申し受けて、この地に建立したとのことである。そこを訪れた聖海上人とその他大勢の人が、 獅子と狛犬が背中を向け合ってお互いに後ろ向きに立っているのを見て「こんなの見たことない! すばらしい! 都に帰ったときの土産話にしよう!」と感動しまくり、とりわけ聖海上人は感激のあまりに涙を流したそうだが、実はそれは近所のやんちゃ坊主どもがしでかしたイタズラで、上人の感涙は無駄になってしまったというストーリーである。

 そこでその実物の獅子と狛犬をもう一度じっくり見て来ようというのが今回の目的である。



 篠山市を通り京都府へ出て、亀岡市出雲に着く。途中にある天引峠などといったかつての難所は、トンネルをはじめきれいに整備されており、快適にとばせた。ただやはり不慣れな面があるので、ゆったりとしたペースでのんびりと田舎道を走る。最初気になったのは、やはりシフトのチェンジである。CD90ではロータリ式だったので、踏み込むことによりシフトアップする。最初はこれが苦手で、交差点の中で失敗したときなどはパニックになっていたのだが、やはり五年の歳月はすごいものである。今ではそれが当たり前になってしまっていて、もとのリターン式が何とも使いにくい。何度もシフトアップするつもりでシフトダウンしてしまった。また、ふと信号待ちで気づいたのだが、右ハンドルについているこのスイッチは何だろう? と考え込んでしまった。しばらく考えてから我ながらあきれてしまった。なんとそれがセルスイッチであることを、忘れてしまっていたのである。CD90がキックしかなかったので、セルスイッチというものの存在を忘れてしまっていたようである。これじゃあ、「往年のナナハンライダー」とか「限定解除の大型免許」なんていうのも恥ずかしくなってしまう。ヘルメットの下で1人苦笑してたら後ろの車にクラクションを鳴らされてしまった。とっくに青信号に変わっていたようである・・・・。


 だが1時間ほど走ってたら、やはり体が覚えているものである。自然と操作の勘を取り戻していた。それと同時に冷静に物事が見られるようになってきていた。まずは単気筒の心地よさである。 今まで乗ってきたものの多くはDOHCの4気筒車である。スムーズに吹けあがるし、パワーバンドに入ったときの加速は凄まじい。といってももう昔の話なので、自分のイメージだけの記憶であるが…。その後、CD90は単気筒ではあるが、わずか85ccのエンジンではその味わいなんてものは無い。それも低回転でドコドコいわせながら走るのではなく、絶えずアクセル全開に近い状態で走っていたのだから、「味」といったものを感じるいとまはなかった。そうでもしなければ、90ccで交通の流れについていくことはできなかったからね。


 それが今、その「味」といったものを体感しているのであった。 まるでピストンの動きが見えるかのような気がする鼓動。言ってみれば鉄の馬の心臓が一生懸命動いているのが手に取るようにわかるのである。これは気持ちいいね。旅に出かける相棒、といった気になる。そしてそのスピードであるが、70kmあたりが一番快適である。一番実用的なあたりが一番心地良いように設定されているようである。たしかに70km/hぐらいならCD90でも充分に出る。そして今までそのあたりを使ってツーリングに出かけていた。だが大きな違いは「70km/h出るバイク」「70km/hで走れるバイク」である。カタログのスペックや実際の動力性能だけではなく、いざというときには右手をほんのひとひねりすればそれだけでいいという気持ちの余裕が、結局は大きな差を生むようである。それと足回り。どうしてもエンジンがばかりが注目されそうであるが、足回りに信頼がおけると、安心して走ることができる。その点、CD90の足回りはふにゃふにゃだったなあ・・・・。

旧暦で、あらためて初詣。


 そんなことを考えながら走っているうちに、目的地の「出雲大神宮」に到着した。まず目についたのが、「初詣」という言葉である。そういえば2月4日が立春だったが、これは昔の正月だもんね。とすれば、新年早々にお参りに来たことになる。いいときに来たものである。あらためて初詣とするか・・・。

 まずはあの獅子と狛犬をじっくりと観察する。口を開けた「阿」形が獅子、口を閉じた「吽」形が狛犬である。これらをやんちゃ坊主の子供らがイタズラをして、背中合わせにしていたそうであるが、このどでかい石の造形物をすんなり動かせるはずはない。おそらく虚構だとは思うが、それによって兼好法師が何を語りたかったのか…。しばし文学の世界に浸る、といったガラにもない行動をとる・・・。その後本殿に参拝し、ブラブラと散策する。

獅子 阿形 狛犬 吽形



 近くのそば屋でざるそば定食を食った後、出発する。この寒いのにざるそばとは思ったのだが、なんとなくそんな気分だったので注文した。ふと周りを見ると、他の客の中にももざるそばを食っているものが多い。ここの名物だったのかも知れない。結構うまかった。


 国道9号線を北に向かって進む。園部町・丹波町を通り、瑞穂町から兵庫県に戻る。そして篠山市へ。ここらあたり一帯は兵庫京都両府県にまたがる旧の丹波地域である。今の行政区分上は別の県になるのだが、本来は、京都府福知山市や兵庫県篠山市を中心とする広大な地域を「丹波国」と呼ぶ。ところが、どうやらもうすぐ「丹波市」なるものが誕生しそうだが、それはここら辺りからみれば、随分辺境の地である。「丹波ブランドを独り占めしようとするあつかましい新市名」、といえば怒る人もいるだろうか? まあ、まつりごとなんて私には関わり合いのないことだが・・・。


 途中に何軒か、丹波ブランドの村おこしふうの店に立ち寄った。ところが何処も、もひとつぱっとしない。何となく、寂れかけたところが多かった。今回は250TRによる初ツーリングである。気持ちよく出してくれた家族に、なにか土産を買って帰らねばならない。感謝の気持ちと次回のために(笑)、なにか気の利いたものはないかと探すのだが、めぼしいものは見つからなかった。やむをえず道の駅で、なんやかやと体裁を整えて帰宅する。


 帰宅して感じたのだが全然疲れていない。たしかに距離も200キロに満たないから、いつもに比べたらとても短距離である。だが原因はそれだけではなさそうだ。まったく気の張ることのないポジションやエンジン特性、手頃なパワーと車体。やっぱりこのクラスが日本の道路事情を考えたら、一番ぴったり来るのかもしれない。おまけに高速道路も走れるし・・・。ちなみに後で知ったことなのだが、高速道路の最高速度は、2輪でも100km/hになったとか。CD90で楽しんでいる間にも、時は流れていたのである。知らんかった・・・・・。

新しい彼女 TR子ちゃん。
早速、交通安全のお守りを張ってやった。


                                                           (2004. 2. 8)




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