倒錯した快楽(?)

(氷ノ山一周コース)


 久々にツーリングクラブ男神の活動が行われた。4月に転勤してからこの方、やはり最初は慣れないことも多くバタバタとした毎日を過ごしていたため、なかなか活動をする時間がとれなかったのである。やっとのことで時間の都合がついたので、F氏とコースについて打ち合わせをする。日帰りツーリングということで、そんなに遠くへは行けないが、どうも最近F氏は体力的に衰えてきたのか、それとも私の行動に愛想を尽かしたのか、やけに遠くへ行くことを拒絶する。今回も打ち合わせのメールに、このような言葉があった。 「キミの場合、かなり倒錯した快楽を愛するようなので、ノーマルな私の理解を越えてます・・・・。」と。


 「なんやと! ゆうたな!」ということで、今回は『近場でのんびり』ということをテーマに、兵庫県最高峰の氷ノ山あたりをうろつくことにした。これなら県内だから、文句はないはずである。


 9時に道の駅山崎で待ち合わせる。ちょっと早めについたので、パンとコーヒーを片手に近くの揖保川を眺めていた。鮎釣りが解禁されており、多くの鮎釣り師が長い竿を持ってそれぞれのポイントに繰り出している。 そんなことをしているうちにF氏がやって来た。地図を見て今日のコースを確認する。希望通りなのでご満悦の様子である。天候も今日は午前中が40%、午後がちょっと高く60%とのことであったが、日も差しており、まずまずのコンディションである。順調なすべりだしで、気持ちよく出発する。


揖保川で鮎釣りを楽しむ人々


 ところが10分も行かないうちに、ヘルメットのシールドに水滴が・・・。瞬く間にザーザー降りになってきたのでバス停に飛び込み合羽を着込む。多少の雨は覚悟していたが、せめて午前中は持つだろうと思ってたのに…。少々気が重いが、いつまでもバス停にこもっているわけにもいかないので、やむなく雨天の中を出発する。降りしきる雨の中、国道29号線を北上する。そして大屋町に向かいそこから横行渓谷に入る。ここは渓流釣り場としても有名なところで、思わず川に見入ってしまう。ポツポツと集落があったがタイムスリップしてしまったかのような村だった。そしてこの辺りにはクマも出没することがあるらしい。


 途中、『ぶなの滴』という、なんとも素晴らしいネーミングの湧水があった。手にすくって飲んでみたところ、歯にしみ通るほど冷たくておいしい水だった。 ただ、口にはブナの滴が、体には雨の滴が容赦なく降りそそいでいるのが何とも言えない・・・。このころにはカッパを通して、雨の滴がパンツにまでしみわたっていた。どうも購入の際にケチったのがいけなかったようだ。安かろう悪かろうである。

名水『ぶなのしずく』 鉢伏山を望む


 舗装道路がとぎれてまもなく、氷ノ山の登り口についた。ここから鉢伏山方面は展望がひらけており、しばしのあいだ景色を楽しむ。ひらけているその方面には青空が広がり、少しばかり陽も差してきた。これからは回復方向に向かうだろうと、楽観的な希望的観測で出発とする。その後ハチ高原スキー場を通過し、今回の一番の目的地である『林道瀞川氷ノ山線』へと向かう。

 鉢伏山登山道入り口からは完全なダートである。全体に堅くしまった土で走りやすいが、ところどころ補修のために砂利が入れてあるのだが、オフロード初心者の私にとってはこれが非常に走りづらい。ハンドルが取られタイヤが埋まってしまう感がして、どうも苦手である。ぼちぼちとゆっくりとしたペースで走る。


鉢伏山をバックに ストレートな林道『瀞川氷ノ山線』


 途中、山を切り開いたストレートな部分があり、なんとも雄大な気分になる。舗装路であれ未舗装路であれ、直線道路を見ると、なんとなく北海道を連想してしまう。そういえば長い間行って無いなあ・・・。カワサキのナナハンを駆って疾駆したのがおよそ20年前である。是非もう一度行きたいものである・・・。などといったことを考えながら走っていると、あっけなく林道も終わってしまった。ちょっと拍子抜けだった。というのはかつて、途中でリタイアしたあの剣山スーパー林道がイメージにあるので、どうも短く感じてしまったようである。 実際の距離はもちろん比べものにならないが、やはりCD90とは性能が違うので、楽に感じてしまうのだろうか・・・。

 着いたところは兎和野高原というところで、水車茶屋という店で山菜天ぷらのつきのうどん定食を食べた。たまたま看板を見て入った店なのだが、結構有名なところだったようだ。芸能人が訪れた写真が何枚か、かざってあった。

 このあたりでは降ったりやんだりの天候で、乾いては濡れ、また乾いては濡れの繰り返しだった。

水車茶屋 中には囲炉裏がありました。


 ここから国道9号線に出て、少し北上した後、美方方面へそれる。おじろ温泉を目指したのだが、知らないうちに通り過ごしてしまい、そのまま鳥取県方面へ向かった。つまり氷ノ山を一周ぐるっとまわることになる。だんだんと道は細くなり、ホンマにこれでええんやろか、と心細くなってしまう。矢田川の源流沿いのその道は、ガードレールもなく、一つ踏み外せば転落間違いないところなので、心して走る。ある部分は路肩を明確にするためか1車線の道の両側に白線が引かれてあったが、薄暗い鬱蒼とした林の中ではその白線が浮き上がり、まるでヘビがタマゴをいくつも飲み込んだように、あるところはふくらみ、またあるところはすぼまりで、なんかぼーッとしてきて変な気持ちになってしまう。でもぼーっとしてたら道を踏み外して谷底に一直線なので、からだのあちこちを動かしては、意識を鮮明に保っていた。全面に舗装はされていたが、僕の持っている古い地図によると、十年程前は桑ヶ仙林道というダートの林道だったようである。


 やっとのことで鳥取県との境の峠に到着したが、そこにあった看板によると、国道482号線は鳥取側の県境までで、兵庫県側は国道ではないとのことである。つまり鳥取県側から見ると、この国道は途中で消滅してしまうということである。けったいな道もあるものだ。


 実はこの時、相次ぐ乾燥と濡れ鼠の結果、気化熱が体温を奪い、体が冷え切ってしまっていた。そしてそれにともない、自然が私を呼びだしたのである(Nature calls me.)。それもでっかいほうである。 急な差し込みに耐えきれず、その県境の峠に単車を放り出して、草むらに逃げ込んだ・・・・・・。    あ〜快楽快楽・・・。

  県境で国道は消滅するそうです。
 手前は国道、向こうはタダの林道・・・・・。


 出したら入れたくなるという単純な体の構造をしているのか、肉が喰いたくなってきた。そりゃ、但馬に来て但馬ビーフを喰わないのは、但馬に対して失礼だろうというあまり筋の通らない理屈をつけて、焼肉屋に行く。ところが行ったときにはもう準備中になっており、次の夜の営業は2時間後であった。


 仕方がないので、近くの名物の弁天饅頭を買ってから温泉を目指した。どうも今日はあまりスムーズにことが運ばないようである。おまけにこの頃から雨足がひどくなりだした。せっかく生乾きの状態にまでなっていたのに、またまたびしょびしょである。 そのうち雨はさらにひどくなってきて、たたきつけるかのような横殴りの雨である。もう温泉どころではなく、視界を遮る雨に耐えながら、必死で単車を走らせた。

 
 しばらくすると、だんだん顔がほころんきたのである。 そしてその後、ヘルメットの下で思わず爆笑してしまった。自嘲の笑いである。いったい何が楽しくてこんな思いをしているのか。また、いったい何度こんなことを経験したら止めるのか…。

 20代の頃と変わらないことをしている自分自身をあざけるとともに、変わらないことしている自分になぜか喜びを感じてしまった・・・。こうなったらもう笑うしかあるまい。やはり私はF氏の言うように、『倒錯した快楽』を愛する者なのであろうか・・・・・。(笑)
                                                        
  (2004. 5. 29)




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