名瀑『天滝』へ


 


  2000年4月9日

     
 日本の滝100選に指定されている『天滝』は、兵庫県の大屋町にある名瀑である。今年はまだバイクでどこにも出かけていなかったので、そこへ春を探しに行くことにした。愛車はCD90。いかにもビジネス用といったバイクで、頑丈なキャリアのおかげで荷物はたくさん積める。今回はここにRVボックスをくくりつけ、その中には昼食用の一式を装備して、F氏と姫路で待ち合わせた。


 まずは播但連絡道路に沿った国道312号線を北上する。この道はかつては交通量が多かったが、播但道の整備によって、今は特に交通量も多くなく快適に走れる。この道は今なお延伸中で、近い将来和田山まで開通するとのことであった。生野銀山に分かれる道を過ぎ、峠を越える。かつてこのあたりは銀山で大いに栄え賑わったと聞くが、今は閉鉱されて、鉱山跡として観光地化されている。



 ここはよく知ったところなのでパスして、朝来郡に入る。このあたりから急に風が強くなり、軽量の我がCD90は不安定で、吹き飛ばされそうになった。その後スーパーを見つけて昼食の食材を調達した。はっきり言ってあまり回転の良くない店らしく、魚なんかはこれ大丈夫なの?と言いたくなるような目つきをしたものが並べられてある。文字通り『死んだ魚の目』をした魚が商品として並べられてあった。そんな中から、昼の野外鍋の食材を選んだのだが、今日の昼は、私の得意料理である。一応寄せ鍋なのだが、細かいルールはない。何でも切って放り込んで、胃袋におさめるだけである。肉でも魚でも野菜でも、なんでもいい。はさみでちょきちょき切って入れて、火が通れば食う。単純明快なくせにうまく火が通っているから腹痛になることも無い。私の一番の得意料理である。



 312号線の途中から西に向かい、山の中に入っていく。神子畑というところに古風な橋があり、なにやら案内板が立っている。それによると、この地域はかつて近くの明延がすずの鉱山として栄えたとき、それにともないたいそう賑わったということである。 そのときの名残の、日本に残存する数少ない鋳鉄橋というようなことが書いてあった。たしかにこの直後に見た、山にへばりつくようにして立っている巨大な施設(跡?)には当時のにぎやかさがしのばれた。昔はこんな山奥に映画館や線路もあったそうである。


 さらに進むと、すばらしい道に変身した。2車線のワインディングで、景色もすばらしい。なんでこんなところだけ道が良くなったのか、ちょっと不思議であった。ただ、路面には黒々とタイヤ跡が無数に残されており、夜ともなれば走り屋が爆音をたてているようであった。その峠を越えてから北に向かうと、その明延に着いた。かつては栄えたところらしいが、今はその面影はない。今日はなんか、廃坑めぐりをしているかのようなコースになってしまった。それを越えたあたりで昼食とする。



 ガスストーブに愛用のアルミ鍋をセットし、煮込んではひたすら食う。このアルミ鍋は山用のコッヘルではなく、ただの家庭用である。だが、取手も何もかもアルミ製なので、焚き火にかざしても気にならないし、頑丈である。ずっと前に、市場で980円で買ってきたものだが、とっても重宝している。最近ではすすにまみれた鍋肌に、愛着さえ感じている。アウトドアは大好きだが、いかにもアウトドア用に作られた用品には実際に使うにあたって、疑問を感じる物が結構ある。まあ、かっこなんて気にせず、のびのび遊びましょう。


 十分腹ごしらえをした後、天滝に向かう。駐車場に単車を止めてから、渓流沿いの道を歩く。日頃運動不足のおっちゃん2人には、いい運動である。30分程度歩いたら、滝にたどり着いた。なるほど大きな滝である。滝を見るように橋が架かっているが、非常にスケールの大きいものだった。滝巡りを趣味となさっている人が多いと聞くが、心が洗われる感覚に、なんとなく共感できそうであった。

 ただ、悲しいかな、釣りを趣味としている私には、『おっ、あのポイントには絶対大物がいるぞ』といった雑念が生じ、せっかく洗われた心がまた、煩悩に汚されてしまう・・・。さもしい心の持ち主である。



 帰りはさらに西へ向かい、国道29号線に出て、姫路に向かった。 かつて250ccに乗ってたころ(20年近く前だが)、この道を通ったことがある。国道に出るまでは1車線の道が延々と続き、民家の庭を突っ切るかのような道であった。地元の人だけが通り、外から来る者は滅多にいないような、そんな道であった。ところが今、完全に整備され、F氏と『たしか、この道通ったよなあ?』と確かめるほど、以前の面影は消えてしまっていた。かつての記憶に上書きするような気分であったが、うれしいような、さびしいような・・・・。


 偶然だが今回のツーリングは、廃坑跡といいかつて通った道といい、昔ありし日々を回想させる旅となってしまった。春という季節は、人を感傷的にさせるのでしょうか・・・・。(なーんて気障な奴じゃ。) 
     

 



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