氷ノ山
 

『春を求めて』の予定だったのだが・・・。




 2001年3月29日


 まだまだ寒い日もあるものの、世間はもう春の訪れを感じさせる今日この頃である。窓からの景色も変わり、昨日は子供が摘んできた土筆が食卓に上った。春である。春ともなれば虫が動き出す。『蠢動』という言葉はこの字面だけでもイメージがわく。というわけで、長年、僕の体に住み着いたバイクの虫もうごめきだしてくる。いつもの通りF氏と連絡を取り、春を求めて出発する。


 当日朝9時に姫路で待ち合わせ、夢前川を北上しそして山崎を目指す。 今回のテーマは、『兵庫県最高峰の氷ノ山へ行き、その林道を走りながら春を実感し、そして春を食らう』 ということで、出発する。結局なんのことはない。ぶらぶら出かけて、どこかで野外鍋でもしようか、いうことにすぎない。いつもの通り、後ろのザックには鍋やコンロ、水や食材一式がつまっている。 のんびりしてうまいものを食って、温泉でもつかって帰ろうという、道楽旅のはずだった。


 山崎インター側の道の駅でちょっと休憩する。天気予報は曇り・所によりにわか雨、といった様子だったが、今のところ心配なさそうである。さらに北を目指して出発する。この道は私にとっては走り慣れた道である。私はしょっちゅう鳥取を訪れていて、この山崎インターで高速を降り、29号線を北へ向かって鳥取県に入るルートは景色がきれいなので、時間に余裕があるときはこのコースを選択する。時間を短縮したいときは作用インターで降りて、そこから北上する。というわけで見慣れた景色ではあるが、快適な道を淡々と走る。
  

 途中の引原ダムで小休止するが、ここはかつて20歳の頃、スズキの250のバイクで訪れたのが最初である。ふざけてダムの欄干にぶら下がって撮った写真が残っている。そのころはせまいグニャグニャの道で、とってもハードだったが、今は整備された快適な国道である。そして現在の本道の脇には、ところどころかつての道の名残が、残骸のように残されてある。かつて自分たちがとばした道が、このような姿で残っているのはちょっと悲しい。


               

   雨 ・ 雪 ・ みぞれ・・・・・。




 まあ、それはともかく、県境の戸倉峠に近づいてきたとき、なんとなくいやな予感がしだした。ヘルメットのシールドに少しではあるが、水滴がつきだした。大好きな雨である。自慢じゃないが、私がどこかへ出かけるとき、必ずと言っていいほど、雨にたたられる。九州に行ったときはほとんどすべてが雨。はじめて北海道に行ったときは、8月のはじめなのに、観測史上始まって以来、という台風で線路はズタズタに切れ、札幌に3日間足止めをくらった。結婚式も雨。新婚旅行も雨・・・・。 F氏についても同様のことが言える。どこへ行くにも何をするにも雨である。一般に言う『日頃の行いの悪さ』のせいだろうか・・・。


 どっちにせよ、雨が降り始めた。そのうえ峠あたりには雪がたくさん残っていて、気温は一気に下がっていく。気のせいか、雨の中には白いものが混じっているのが見える。なんで春を求めに行ったのに、みぞれに降られるのか。ガタガタふるえながら缶コーヒーで暖をとる。


 しばらくすると雨がやんだ。やんでくれた、と言いたくなる心境だった。さて気を取り直して再出発する。県境の新戸倉トンネルを越え、鳥取県に入る。体ががたがた震えるほどの寒さであったが、なんとか耐えて峠を下りる。地酒を扱っている横井酒店の手前を右折していよいよ氷ノ山に向かった。途中、茗荷谷という集落を通ったが、いかにも山村の暮らしを感じさせるような集落だった。しかしこの道は国道に昇格しており、着々と整備が進んでいる。スキー場までたどり着くと『氷太くん』という立派な宿泊施設ができていた。最近はやりの、村おこしの一環であろう。でもなぜ、どことも西洋的で、そしてチャペルを備えた設備なのかは理解に苦しむところである。


 そこを通過して、さあ、今から林道へ入ろうと思った瞬間、道は雪で閉ざされていた・・・。たしかにまだ一部ではボードやスキーをしていた。林道に雪が残ってないはずはない・・・。またもや思いつきで出かけたために、こんなあっけないバカげた結末を迎えたのであった。


 まあ、そんなことにしょげたりする私達ではないので、少し山を下り、渓流沿いの岩場で食事にした。今日のメニューは得意の豚しゃぶである。詳しくは『酒と肴』のコーナーをどうぞ。2人で800グラムの豚肉をすべて平らげた。あとは定番の中華そばで締めくくる。アルコールも少々入ったのでここでのんびりとつもる話をして過ごした。通りがかりの車は、おっさん2人の食事風景をなにか異様なものを見るのような、怪訝なまなざしで通り過ぎた・

 


 さて出発しようかとしたとき、ぱらぱらとまた雨が降り出した。またかと思いながらも、もう慣れっこなので そんなに気にしないで走り出す。 ところがどっこい、ぱらぱらどころかザーザーのじゃじゃ降りとなり、見る見るうちに2人は濡れ鼠になってしまった。


 気温はわずかに2度。真冬並みの寒さの上に、風によって体温は奪われ、体感としては氷点下である。 じわじわとパンツにしみこんでくる冷たい雨を感じながら、必死で南下する。やっと山崎までたどり着いたとき、雨はやんだ。というよりここは雨が降ってなくて、道はからからに乾いている。いったいこれはなんなんだ、と思いつつも、冷え切った体を温めるために『伊沢の里』という温泉に入った。きれいな施設で気持ちよかったが、最初冷え切った体には、温泉の湯が痛く感じられ、悲鳴を上げていた。しばらくしてやっと人心地がついたものの、着替えは持ってきていない。つまり、あのべちょべちょの下着とズボンと靴下を身につけなければならない。ドライヤーで乾かしてみるが、ほんの気休めにすぎない。勇気を奮い起こしてその濡れた服装に着替えて、外に出ようとした途端、また愕然とした。外は雨である。まるで僕らを追っかけてくるかのような雨雲であった。
 

 もうなんとでもなれ、といった心境でまた走り出す。あいつの日頃の行いが最悪だからこんな目に遭うかと思うと、無性に腹が立ってくる。ヘルメットの下でぶつぶつつぶやいていたが、同じことをF氏も考えていることだろう。その後、夢前で分かれて、ひたすら家路をいそいだ。 でも次回は小豆島を征服しようという約束ができていた。この男と20年近くつきあってきたが、どうも腐れ縁らしい。昔の友は変わらない友なのかもしれない。


  生き返った温泉 『伊沢の里』




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