瀬戸内の小島
『小豆島』


 8月もあとわずかとなり、そこはかとなく秋の気配が感じられるようになってきた頃、今年の最後の夏を感じるために、瀬戸内の小島、小豆島に出かけた。温暖な気候で椰子やオリーブが茂り、冬でも暖かいところだが、わざわざ猛暑と言われた今年の夏の締めくくりに、こんな場所を選ぶのは悪趣味か? 本来は25・26の連休で一泊のキャンプツーリングのはずだったのだが、26日にしょうもない出張が入ってしまい、近場で25日だけの日帰りツーリングになってしまった。


 今回の目的地は小豆島。あの『二十四の瞳』であまりに有名な瀬戸内の小島である。かつて3回ほどこの島を訪れたことがあるが、最初は私が大学受験に失敗したとき、両親が「受験勉強お疲れさん」、ということで旅行に連れてってくれた。それが最初であった。その時は、滋賀県の実家から姫路まで高速道路を乗り継ぎ、そしてフェリーに乗って島に渡り、岬の分教場、寒霞渓、銚子渓のお猿の国、などを見て回った。当時の写真を見るともちろん若く幼い顔をしているが、なんともいえないうっとうしいツラをしている。浪人することは決まったが、予備校さえまだ決まってないときであった。『青春の挫折の顔だなあ』と今は懐かしく思うが、その時は順調な人生で最初の挫折・屈辱であった・・・。今思えば優しい親だったのかなあ。


 次に訪れたのは大学生になってからである。ひょんなことから大学では空手道部に入ってしまい、明けても暮れても厳しい練習に耐えていた。そしてその恒例行事である春合宿でこの島を訪れた。連日OBがやってきて現役を指導する、というかシゴく。今の科学的根拠に基づいた練習方法とは対局にあるような、根性論まるだしの練習メニューで、なおかつ先輩には絶対服従であった・・・。 今でもそんなことしてるのかな?



 朝6時半にいつもの場所でF氏と待ち合わす。この男も今、職が変わってヒーヒー言っている。ちょうどいいストレス発散である。姫路港に直行しフェリーに乗る。船室の前にいた釣り師風のおっちゃん集団が、いきなりうどんをすすりながらビールを飲み始めた。朝が早かったので朝食をとっていなかった私の胃袋が、きゅーっと締め付けられるかのように私の理性を誘惑する。「いまからバイクに乗るのにビールなんてとんでもない」、という理性が、「1時間半ものるんやでぇ〜。ちょっと眠ったらすぐ醒めるんとちゃうか〜」というもう一人の同居人の悪魔に誘惑されかかっている。私の心の中に住み着いているこの2人はよく喧嘩する。だが昔から全然その力関係は変わってないようで、どうも悪魔君の方が勝率がいい。結果、きつねうどんとビールの朝食の後、乗船中ずっと爆睡する。


 爽快に目覚めて走り出す。昔からなぜか、島などを一周するときは右回り。別に決めているわけではないが、そうなってしまう。まずは岬の分教場に向かう。軽快に走って、表示に従い左折する。すぐに『壺井酒店』というのが目に入った。そういえば20年前にもこの店を見て、壺井栄を身近に感じたなあと古い記憶がよみがえる。 その後整備された道をとばすが、かつてはここをあの大石先生が自転車で颯爽とはしり、当時の生徒の度肝を抜いたんだなあと想像を巡らせながら進んでいくと、その岬の分教場にたどり着いた。


 昔のままに残されてあるその分教場は、もちろん20年前に見たままであった。ちっちゃな木の椅子や机。古びたオルガンや勉強道具。ここで目を輝かせて学んだ子供達が、戦争へとかり出され、命を失っていった。大石先生だけは、戦争はきらいや、死んだらあかん、といった。時代が時代だけに偉い人だと思う。『これこそが教育の原点なんだ。日本の教育が忘れ去ってしまったものはこれなんだ。』と感慨に浸っている私を、F氏は『一番似合わん奴がよう言うわ。』とほざきよった。相変わらず感動のない奴である。

岬の分教場(昔のまま・・・・・)

平和の群像



 その後映画村に立ち寄った。ここは初めて見る施設である。田中裕子主演の二十四の瞳のセットがそのまま残されており、それが上映されていた。思わず見入ってしまう。


 映画村を出てから内海町を通ると、町全体に醤油のにおいが立ちこめている。小豆島はオリーブと醤油が名産である。たまたま立ち寄った醤油製造所で『だし醤油』なるものを土産に買った。これは帰ってから試してみると、絶品であった。刺身であろうがだしに使おうが、どのように使ってもうまい。なくなったら直送してもらおうと考えている。
 土庄の平和の群像の前で記念写真を撮り、寒霞渓に向かう。小豆島自体は小さな島だが、山は険しくそそり立っている。『神懸』が語源らしく、いかにも奇岩・絶壁が連なる険しい山である。昔、親に連れてきてもらった時はそんなにも思わなかったが、自分がハンドルを握り、ましてや90ccの小排気量のバイクで来たら、その険しさに気づく。


 ここで愛車CD90の弱点がモロに出てしまった。坂道に弱いのである。確かにものすごい急な坂道の連続である。緊急用の避難場所の登り坂が用意されてあるのを初めて見た。それにしても遅い。ここぞとばかりにF氏がぶち抜いていく。いかにも勝ち誇ったような偉そうな態度で・・・。しばらくすると待ってくれてはいるのだが、またぶち抜く。「おらっ、おんどれはぶち抜くためにまっとるんか」とキレかけた。よくもまあ、こんな奴と20年来のつきあいである。 なんとか山頂までたどり着いたが、そこにはそうそうたる大型バイクが並んでいた。 かつては時代の最速マシンを乗り継いでいたこの私が、今はすべての単車に抜かれ、みじめに路肩に寄って、抜き去る単車をやりすごす・・・・。また心の中に悪い虫がうごめきだしたようである。


 寒霞渓ではロープウェーに乗って見物する。やはり奇岩は見ものであるが、距離が短くちょっと物足りない。料金はしっかりしているが・・・。

寒霞渓に向かう急坂

名勝の寒霞渓(ロープウェーより)



 その後姫路に戻り、家路を目指す。
今回は愛車の弱点を再認識してしまった。でもまあ、そもそもこの単車に性能を求めるのは、筋違いである。『丈夫で長持ち・金いらず』(うちの嫁さんと一緒?)が長所のバイクである。 帰ってきたときにはやはり愛しくなって、『すまんなあ、本来お前は家の近所をぐるぐるまわるために作られたのになあ』と思いなおし、ガレージでまたシートをポンとたたいてやって、労をねぎらってやった。




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