春の饗宴(?)


 


 3人の子供のうち、上2人を連れて、ある滝を探検しに行った。かつては修験者の業場であったという噂もある滝ではあるが、今はあまり訪れる人もなく、ひっそりとしたところである。ときおりハイカーか釣り師が訪れるぐらいである。

 この日は一体何があったのか、まさしく『鬼の霍乱』と言うべきもので、我が家の鬼ヨメが39度の熱を出して伏せってしまったのである。別にいい気味だとは思わないが、どうも『鬼の居ぬ間に洗濯』とはならないようだ。きっちりと子守を仰せつけられたのである。

 幼い子供連れなので、いくら渓流魚がいる沢だとはいっても、釣りをすることは無理である。最初からあきらめてはいたが、さすがに察しのいい我が息子が、「お父さん、僕釣りしたいようー。」と言ってくれたのである。すぐにリュックに竿をしのばせ、準備をする。

 途中、崖横の小道を通ったり、丸木橋を渡ったりと、危ないながらも結構子供達も楽しみながら、滝へと向かった。ここぞというポイントには竿を出しながら。まったくアタリもなかったが、ある落ち込みでククッとした、確かに生き物の反応があり、あわせて抜き挙げると、渓流釣りの嫌われ者「アブラッパヤ」であった。 でも値打ちのわからない子供達は大喜びで、「お父さん、すご〜い!」と賞賛のまなざしを送ってくれた。 久々に親父の面目躍如である。

           探検隊気分の子供達


 それからしばらく進むと、なんと道の真ん中に巨大なウシガエルが通せんぼしている。 ヘビほどではないが、それと大差ないぐらい私はカエルが大嫌いである。高校1年生の時、生物の実習でカエルを3匹も解剖したことがあるが、それ以来どうも好きにはなれない。ほんとはこのままバックして帰りたかったのだが、先ほどの子供達の親父に対する畏敬の念をもろくも崩してしまいそうなので、近くから棒を拾ってきて遠くへ追いやった。心の中では「頼むからこっちに飛びかからんといてな。」と祈るような気持ちで・・・。無事カエルは向こう側の崖下へ飛んでいってくれたので、さらに道を進むことにする。またもや「お父さん、強〜い!」と絶賛してくれた。

 そしてついにその滝にたどり着いた瞬間、絶句してしまった。滝壺の手前の水たまりに、なんと10数匹の巨大なウシガエルがうごめいているのである。あるものは下のカエルを押さえつけて絡み合っているし、またあるものは1匹のメスを巡って壮絶な争いをしているし、もがきたわむれ、さながらそれは春の饗宴、生命の謳歌、ともいうべきか、はたまた乱交パーティーとでも言ったらよいのか、すさまじい様相を呈している。

 そして人間の姿に気がついた彼らは、あるものはこそこそと恥ずかしそうに身を隠すが、あるものは人目があろうが無かろうが全く動じない様子で行為にいそしんでいる。やっぱりカエルの世界も人間の世界も、本質的には変わらないんでしょうねぇ・・・・。

           カエルカエルカエルカエル・・・・・

 自然の神秘に圧倒されてしまい、滝を見に行ったはずなのに、帰ってから病床の嫁さんに子供達が話したのはカエルのことばっかりであって、一言も滝の話や親父への敬意の言葉は出なかった・・・・・。ちなみに釣った魚も、あのアブラッパヤ、通称『クソバエ』1匹であった・・・・・。
                                                    (2002.3.30)




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