滝太郎(巨大イワナ)伝説(?)




 もうかなり前のことになるが、渓流釣りを始めたころのことであった。1995年の8月10日、待ちに待った盆休みに、夜討ち朝駆けで越前の九頭竜川の、とある源流に釣行した。親には「盆に殺生するなんて、この罰アタリ者」と叱られたが、古くさい迷信なんかよりせっかくの休暇である。 釣りがおもしろくておもしろくて仕方のない時に、そんなことなど、頭の片隅にもなかった。「罰でもいい。竿先がひったくられるような大きなアタリが来てくれ!」と思ったぐらいである。


 夜中の高速道路をとばし、そして夜明けから釣り上がる。ところが全く釣れないのだ。幸い罰はあたっていないが、魚の心地よいアタリもまったくない。渓相はいいし水量もばっちりである。 あちこちの枝に蜘蛛の巣があり、先行者もいないようなのに、なぜか釣れない。そこで別の沢に入ることにした。

 そこは高い堰堤に阻まれていて、その上にたどり着くだけでも一苦労である。 藪をかきわけ、岩をよじ登り、やっとのことでその上にたどり着いた。 ところが岩によじ登った瞬間、ウェーダーが岩にひっかかり、びりっと裂けてしまったのである。渓流釣りにおいて、この腰まである長靴(ウェーダー)は必需品である。いくら夏とはいえ、イワナが生息する渓流の水は、氷水のように冷たい。渓流釣りに限らず、若いときに体を冷やしたが為に体をこわしたという話は山ほども聞く。そのためウェーダーはなくてはならないものなのである。こんな山奥ではどうしようもないので、とりあえずガムテープで補修する。

 そうまでして堰堤を登ったのに、全く釣れない。一体今日はどうなってんねん、と思いつつ、さらに上流を目指すと、今度はいきなりヌゥ〜〜と巨大な動物が目の前に現れた。幸いそれはクマではなくカモシカであったが、こんな山奥でいきなり出くわしたら、もう恐ろしくて恐ろしくて・・・・。やっぱり罰が当たったと思ってしまった。

 なんとなく釣りの意欲が失せてきて、心細くなってきた。もう止めようと思ったその矢先である。目の前の深い淵にヌゥ〜〜〜と巨大な魚が現れた。尺(30センチ)どころか1メートルもありそうな巨大な魚である。 まあ、 今、冷静に考えれば50〜60センチぐらいだったのかもしれないと思うが、それにしてもダム湖ならともかく、源流ではまずお目にかかれないサイズである。それも岩魚は黒い地肌に白やオレンジの斑点があるのに、その魚はどうみても地肌が白かったように思う。それが目の前をゆったりと泳ぎ、私のエサなどには見向きもしない。そして、あざ笑うかのように私の仕掛けのついたエサをしっぽでバシッとたたくと、底へと潜っていった。そして2度と姿を現すことはなかった……。

  山の神秘の魚『イワナ』



 イワナにまつわる不思議な話はたくさんある。子連れの女性に化けて、赤飯をもらって食べたという伝説も聞いたことがあるし、人間の顔をした人面イワナの話も聞いたことがある。やっぱりこんな深山幽谷の主は、ただの魚ではないようである。なんとなく、本当に罰が当たりそうな気分になってしまった。 そして、そそくさと山を下りた。


 だが現金なもので、車の近くまでおりてくると、さっきの気持ちは消し飛んで、ビクのことが気になってきた。まだ一匹もおさまってないのである。わざわざ越前までやってきてボウズとは情けない、と思ってちょこっと竿を出すと小さなイワナが食いついてきた。普通なら完全な放流サイズである。にもかかわらず強欲丸出しで、ビクにおさめてしまった・・・・・。

 その結果かどうか、帰りの北陸自動車道でスピード違反で捕まり、しっかりと罰を当てられてしまった・・・・・。


                                                           (2003.2.10)






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