2匹目の泥鰌…そして泥沼。




 先週9月21日にある釣りクラブの会合に参加して、テンカラ初挑戦にしては出来過ぎた釣果があり、気持ちよく今シーズンの渓流釣りを終了するはずであった。

 ところがその次の日曜日に、またまた釣行のお誘いがあった。 聞くところによると、誘ってくれたY氏は、その前日に海外出張から帰ってきて、その日の夜中に出発し、そして翌朝早くから釣り始めるといった強行軍だった。世の中にはやはり、お好きな方がいらっしゃいますなぁ。 私はといえば、この前の釣行で気をよくしているので行きたくないことなど、あろうはずはない。非常に甘い考えではあるのだが、『2匹目の泥鰌』を狙ってアマゴ釣りに行くことにする。即座に了解の返事をして、あとからじっくりと嫁さん攻略の手を考える…。

 今回釣行する川は、三重県のK川である。奈良県との県境で、アマゴの濃い川だそうだ。 私にとっては初めての川である。夜10時に出発し、阪神高速を飛ばして大阪の街中を越え、さらに奈良を越えて三重県に入る。着いたのは2時頃で、車内でワンカップ片手に一杯やってから、車中泊をする。空には文字通り満天の星。こんなにたくさんの星を見るのは久々である。


 翌朝6時、いったん目を覚ましたのだが、ついウトウトしてしまい、7時半から竿を出すことになった。まずはK川支流のH川に入る。この川は川幅も広く、テンカラの少々長い仕掛けを振り回しても、どこにもひっかかることなくとっても釣りやすい。日頃釣っている薮沢とは、全然趣を異にする渓相である。 ただ、こんなにも開けていたらお日様も燦々と降り注いでいる。ということで、結局私は一匹も釣れずに、2時間ほどを過ごした。どうも釣れそうにないので、ここらあたりで切り上げて、別の河川に移ることになった。このときなぜか、水にはややうすく濁りが入ってきていた。


 次に入ったのがK川である。ここはかなり奥まったところで、先ほどのH川とは大違いである。何が違うかというと、まず川にころがっている岩の大きさが違う。1つ1つがとても大きいのだ。そのため、沢を登って釣っていく渓流釣りでは、大変な労力を必要とする。次に違うのは、周りの景色である。木が鬱そうと茂っており、そのため川自体には日が差さず、昼間でも魚が活発に餌をとると思われる。だがこれは、非常に釣りづらく、あちこちに仕掛けが絡まることを意味している。とりわけ私のような初心者には、そういう意味では諸刃の剣になりそうな予感がした。

  開けた川…H川。 釣りやすい。
  でも結局はボ〜ズ
      巨岩ゴロゴロのK川。
      遡行するだけで疲れる…。
      でもここで一匹



 その予感通り、あちこち仕掛けを絡ませながら、ポイントにはうまく仕掛けを入れられずに、結局は釣果もなく、むなしく時が過ぎ去っていく。頭には『ボーズ』の一言がちらつき始める。やっぱりこの前はまぐれだったんだなあやっぱりテンカラは難しいのかなあ、と思いはじめたら、とことんまでそう思ってしまう。こんなときエサがあれば、思わず手を出してしまっただろうなぁと思う。かつて禁煙を実行していたとき、たった一本のシケモクを部屋の片隅で見つけたがために、あっさり禁煙が終わってしまったことがある。別に禁煙と同様に、餌釣りと訣別しようとしているわけではないが、昔禁煙で苦労していた頃を、ふと思い出してしまった。

 そんな矢先、ふとアタリを感じてあわせたところ、バッチリ生き物の反応がある。しっかりあわせて抜き上げた。だが手元まできたとき、あわせが弱かったのかポロリと落ちてしまった。幸いもう陸地の方に抜き上げていたので逃げられはしなかったが、あぶないところであった。まあ何にせよ、『ボーズ』は逃れられた。

 その後はまた釣れることもなく、いったん引き上げて、先ほどのH川に戻る。ここで昼食をとって、しばらく昼寝をする。どうせお日様燦々なんだから釣れっこないし、4時にポイントをさだめて、それまでは午睡を楽しむ。昼食時に飲んだ一本の缶ビールが、心地よい世界へと導いてくれる…。

 夢の中で尺アマゴを釣っていたときに起こしてもらい、さて、現実にでっかいのを釣ってやるぞ! と意気込んで川を見たところ、愕然とした。午前中に釣った清い川は、なんと泥水と化しているのだ。 水量は増えていないが、もうまっ茶っ茶で、完全な泥水である。これでは釣りなんてできるはずもない。そして遠くでは、ドカーンドカーンとなにやら岩でも砕いているような音がしている。原因を究明すべく、車を林道に走らせた。すると200メートル先に工事中有りという看板があらわれ、さらに進むと大規模な堰堤工事が行われていた…。


 これではどうしようもないので思案したが、その工事現場横に流れ込む支流に入ることにした。 同行のY氏は小さいながらも、何匹かアマゴを釣っていた。私はサッパリである。しばらく釣り進んだが、大きな岩が立ちはだかっているところで終わりとする。どうもストレスがたまってしまう。

 車で先ほどの場所まで戻ってみると、どうやら作業も終わったらしく、先ほどに比べてかなり水の濁りが消えている。これなら何とか釣りになるかも知れない、ということでもう一度竿を出す。時刻は5時半。 およそ30分の、ほんとにほんとの今年最後の釣りである。現在魚籠には一匹のアマゴのみ。ラストチャンスの30分に全勢力を傾けて竿を出す。


 全然アタリもなく、もはやこれまでか、と思った瞬間、待望のアタリ!  そこはビルぐらいもあるほどの巨大な岩のすぐ下のポイントで、いかにもいそうな場所だった。 思いっきり合わせて抜き上げると、18センチクラスのきれいなアマゴであった…。やっと2匹。でも2匹。だるまさんの両目があいたような気分だった。

    2匹目の泥鰌たち…。
  よくぞ私をボ〜ズにせずに
  釣れてくださいました。 感謝!


 今回は『2匹目の泥鰌』を狙いにいって、『2匹のアマゴ』を釣った。自分で言うのはなんだけど、テンカラ回目釣行としては、上出来ではないだろうか? 堰堤工事とそれに伴う泥水という、とんでもないコンディションの中、よく釣れたものである。結果的には数は少ないものの、十分満足できた今シーズン最後の釣りとなったと思う。そのおかげで、辛い遡行をして疲れているはずなのに、帰り道はかなりの距離の下道と阪神高速をとばして帰ってきても、それほどしんどいとは感じなかった。それどころか、もう来シーズンのことを考えると、今度は自分で巻いた毛針で釣ってみたいという、夢というか欲望というか、がメラメラ〜と燃え上がってきていた。 川の泥水は引いてくれて30分のチャンスを与えてくれたが、どうやらテンカラの泥水は泥沼となって、どっぷりと私を飲み込んでくれたようである…。

 



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