最初の一匹

(鳥取県の秘密の川にて)




 4月から私は新しい職場に行くようにと、転勤を命じられた。リーマンであるからには、こればっかりはどうしようもない。 というわけで、前職場での残務整理や新しい職場での不慣れな仕事によって、いつになく慌ただしい毎日を過ごしている。


 ところが忙しければ忙しいほど、なぜかその逆のことが頭にちらついてしまうのは、私だけに限ったことなのであろうか? 禁漁期間中にせっせと作り上げた毛鉤を試してみたくて仕方がないのである。解禁早々に十津川にテンカラ釣行したのであるが、なごり雪に阻まれ、、結局は一匹の魚も釣れなかった。だからこそ余計にそのことが気にかかってしまう。


 というわけで、なんとかならないものかと思っていた矢先、予想外に4月6日に休みがとれたのである。 これは行くっきゃない、ということで5日の夜に出発し、6日の朝から釣り始める。まさに夜討ち朝駆けである。行き先は鳥取県の某河川で、そこは漁業組合が存在しない秘密の川である。 だからもちろん釣れれば天然物であるが、そうたやすくは釣れない川である。でも自作の毛鉤第1号にはやはりそれにふさわしい魚であってほしいという気持ちから、そこに決めた。


 山陰の霊峰「大山」を源とするその川は、上流にはイワナが潜んでいるらしい。大山の清水に磨かれた魚体はきっと美しいに違いないと、勝手な想像をしながら、愛車kawasaki250TRを走らせる。今回はバイクによる釣行である。これならかなり奥深くまで入って行けるだろうし、何より満開の季節である。 季節を直に感じるにはバイクが一番いい。



 釣り初めてしばらくの時間が経ったが、全く反応がない。魚がいないのか、あるいはいても自作へなちょこ毛鉤は見破られているのか・・・。だんだんと前回のボウズ釣行が頭をかすめる。やっぱりテンカラは釣れないのかなあ、と思ってしまう。すると決まって思うのが、「エサ釣りなら釣れていたのでは?」ということである。 じゃあ今までエサ釣りでそんなにすごい釣果をあげていたのかというと、決してそんなことはないくせに、なぜかエサ釣りの方が釣れそうな気になるのは不思議なものである。


 ところがついにその瞬間がやってきました! 流した毛鉤にスッと黒い魚体が近づき、次の瞬間、反転した。とっさにアワセを喰らわしたら、バッチリ鉤に掛かっている。抜き上げてみると、22センチのイワナであった。姿を見てあわせる釣りというのは、ゾクゾクしますなあ。これこそが、テンカラの面白さなんだろうね。何枚も写真撮影してからビクにおさめた。記念すべきこの魚は、私が味わって食ってやろう・・・・。その後3匹ほど、チビイワナが釣れた。全部逃がしてやったが、こんなにも釣れるとは思っていなかった。

自作毛鉤による第1号イワナ 大山に源を発する秘密の川



 そしてやや深めのポイントの、自分がここぞと思うピンポイントに絶妙に毛鉤が振り込めた。最近何度かに1回は思ったところに毛鉤が飛ぶようになってきた、と自分では思っているが、本当のところは、何度かにいっぺん、まぐれがおこるにすぎないのであるが・・・。(何十回に一回かな?)  たまたまこの時はそのまぐれが起こったわけだが、次の瞬間 ギラッと白い魚体が反転したのが見えた。即座にあわせたら、かなりの強烈な引きである。慎重にやりとりして抜き上げると、28センチのイワナであった。霊峰大山の伏流水が湧きだしたその清水で洗われた魚体はいかにも麗しい。深山幽谷の主は、美しいというよりも気品があった・・・・。そのくせ私のお粗末な毛鉤に食いつくとは、よっぽどのバカイワナなのかもしれないが・・・。まあ素直に、我が毛鉤もそれなりに完成してきたのだと思っておこう。その後何匹かは釣れたが、キープしたのはこの2匹だけにした。


28センチのイワナ。自作毛鉤『桃色の誘惑』(笑)をバッチリ食った。


 帰って塩焼きにして一杯やったところ、ヨメさんが言うには、今まで釣ってきたどのイワナよりもおいしいとのことである。たしかに淡泊で上品な味には違いないが、コクと言ったらよいのか、たしかにうまかった。名山があるところには名水があり、名水があるところに育った魚はこれまた最高の食味である。酒がすすむなあ・・・・。さて、明日もまた働こうか・・・。

きれいなワサビ畑がありました。 入渓地点にて

                                                         (2004・4・6)

 



戻 る

 

トップに戻る


釣れても
釣れなくても

ツーリングクラブ
【男神】

酒 と 肴

  自転車に乗って

おっちゃんの独り言