紀伊半島の渓流魚


 


1995年 6月11日〜13日


 奈良県吉野郡には「大峰山」という山がある。正式には山上ケ岳を中心とした大峰山脈なのだが、職場の友人2人と登山に出かけた。今でも女人禁制を続けている、大変きびしい、信仰の山である。私たち3人は信仰心などまったくない不埒者だが、山上ケ岳の大峰山上権現を参拝した後、かつての修行の場であった奥がけの道をたどることにした。その2泊目のことだが、奥深い山中をさまよったあと、やや開けた場所でテントを張った。
    
 季節は絶好で、シャクナゲが咲き乱れ、アカヤシオが色鮮やかに目を楽しませてくれた。この場所は大変すばらしく、山を紹介した書籍には写真が掲載されることもあるらしい。 そしてその近くには川が流れており、それは渓流釣り師にはこたえられないような清流であった。



  その清流で、竿を出したのである。今回は、本格的に釣りをする気はなかったのであるが、実は食料がほとんど底をついていた。だから本当のところは、せっぱ詰まった食糧確保というのが一番の目的であった。といっても紀伊半島にも渓流魚がいるという噂は聞いてはいたので、実際にいるのかどうかを確かめてみたいという期待もあった。


 普段釣っている藪沢とちがって、すばらしいロケーションである。おもいっきり竿を触れるし、最高の気分であった。そして最初の1匹は、倒木の陰を狙ったものであった。そっとエサを流したところ、すっと近寄ってきた魚影が見えた。一瞬、魚はためらったようであったが、次の瞬間、猛然と食いついてきた。ばっちりあわせて抜きあげると、27センチ級の渓流魚であった。全体的に白っぽく、そこに不鮮明な白い斑点が無数に見られた。そして顔は獰猛そのものであった。

 続いて2匹目は小さな滝壺を狙った。滝壺といっても、巨岩の下が洞窟になっており、そのなかに大きな落ち込みがあるといった感じで、昼なお薄暗く、渓流魚にとっては絶好のすみかである。仕掛けをそっと入れると予想通り、すさまじいあたりがあり、大物の手応えである。そこでちょっとあせってしまい、あわせのタイミングがずれてしまった。そのため顔まで見ながらも、釣り落としてしまったのである。 「釣り落とした魚は大きい」というが、ほんとに大きかった。ひょっとしたら、もう1度食いつくかという、甘い期待でエサを流したが、来たのは20センチ級の奴だった。結局このポイントで3本釣ったが、あの大物はついに顔を見せなかった。



  結果、合計7本の魚を釣り上げたが、焚き火であぶって塩焼きにし、我ら3人の胃袋におさまったのであった。

 

 



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