(エサ釣り)  VS  自作毛鉤(テンカラ)
                                        




 今回の釣行先は、鳥取県の,某河川である。友人と2人で行った。実はこの友人はとんでもない悪友で、10年ほど前に私に悪魔の趣味「渓流釣り」なるものを教えた張本人である。だが今年は忙しくて、2人ともロクに竿を出していない。そこでたまたま休みが取れたこの日に思いっきり楽しもうと、悪友2人が渓流に繰り出した。

 5月14日の夜11時頃、高速道路を西に向けて走る。本当は東に向けてホームグラウンドの九頭竜川を目指すはずだったのだが、諸般の事情があって近場のこの河川に行くことにした。コンビニで食料・酒等を調達したあとその入川場所に陣取って、夜を明かす。いつものパターンなのだが、ブルーシートとマットだけで、地べたに直接寝る。少々肌寒かったが、ボリボリとスルメを囓りながらガソリンを補給すると、体の内側から暖まり、快適な朝を迎えることができた。

    

         道でブルーシートにくるまってオネンネ・・・・・。zzzzzz



 かつてこの友人に手ほどきを受けたのはエサ釣りである。それ以来ずっとエサ釣りで、各地の渓流を巡っては渓流釣りを楽しんできた。 ところが昨年、ひょんなことからテンカラという毛鉤釣りに接することになり、最近はその釣り方でイワナやアマゴを相手に遊んでいる。といっても、まだまだわずかしか経験がないが・・・。今日は遊び心で、『エサVS毛鉤』 で勝負をすることにした。


 車を置いたところから入渓地点まで、延々と坂道を下る。帰りはこれを延々と登ることになるので、行きはヨイヨイ帰りはコワイそのものなのだが、今は早くたどり着きたい一心で、足取りは軽い。帰りはどうなっていることだろうか? 足取りは軽くビクは重く、とありたいものである。


 川にたどり着いた最初のポイントでは、まずは友人のI氏に竿を出してもらう。I氏はこの川は初めてなので、とりあえずは譲ってあげようという余裕の気持ちだったのだが、なんといきなり25センチの良型イワナを釣り上げたのである。川を紹介した手前、全くの貧果でも気を遣うが、いきなり釣られたらこっちの心にも闘争心が芽生えてしまう・・・。「お〜、良かったのう!」と口では言いながらも、負けん気がメラメラと燃えさかっている。ホッとした気持ちとクソッという気持ちが入り交じり、次は俺がでっかいのを釣ってやろうと竿を出す。そのうちにまたI氏にイワナが釣れる。その後やっと私の毛鉤にも魚が食いつき、挽回をはかろうと意識した瞬間、ポロリとはずれてしまった。実は昨日、釣具屋で竿を衝動買いしてしまい、今日はその竿の使い初めである。軽い竿なので、振り込みはしやすかったのだが、どうもアワセが今までの竿と違うのである。「胴に乗る」といった感じ、とでも表現すれば良いのだろうか・・・。どうやらアワセが甘かったようである。  

☆ 現在 2対0・・・。


 そうこうしているうちに、今回の川の最大ポイントの滝壺にやってきた。ここは実績のあるところである。 ここで仕留められなければ、今日の勝負は負けが濃厚になってしまう、ということで、気合いを入れて毛鉤を振り込む。I氏もハリを仕込んだエサを流す・・・・。


 いきなりドカンと水面を割って飛びかかった魚の顔が見えた瞬間、反射的にアワセを入れた。先ほどの失敗を教訓にして、今度はガッチリとあわせた。強烈な引きを味わいながら寄せて取り込むと、なんとも見事なアマゴである。サイズは27センチあった。尺には足りないが9寸アマゴである。先ほどのI氏のイワナと比べると、長さは2センチしか変わらないのだが、全然イメージが違う。イワナは丸く長い魚体をしており、まるで蛇のようなスタイルだが、アマゴは体高もあり、いかにも魚といったスタイルである。長さの違いは2センチかもしれないが、イメージ的には、一回りも二回りも大きいといった印象である。

☆ 現在、数は2対1で負けかもしれないが、『釣り』(漁ではない!)では 完全勝利.! (のつもり…)

       

9寸アマゴ!  体高があるでしょ。
  自作毛鉤
    『青春のときめき』
     (ピンクとブルーの組み合わせより。)
       
          なんちゅうネーミングや・・・・・。

  



 その滝を苦労して巻いて、その上流へ出た。最初は開けたところなので、ラインを振り回すテンカラには、とても釣りやすいところである。だが釣れたのはちっちゃいイワナばかりだったので、リリースする。 そして次の滝壺にたどり着いたのだが、どうもこの辺りから不利になってくる。


 ここにはいかにも魚がいそうなポイントがあちこちにあるが、どうもテンカラには釣りづらいのである。 大きな倒木があり、その陰などは絶好のポイントではあるが、長いラインを振り込んで毛鉤を入れるテンカラ釣りでは、そういったポイントには打ち込めないのである。(あくまでもそれは、私の腕のレベルでは、ということである。誤解のないように。)  それに対してI氏の仕掛けは、釣り糸を短くして先にはハリとエサと錘だけ、という至ってシンプルな、いわゆる『提灯釣り』である。 これならどんなに狭い小さなポイントにでも、確実に仕掛けを入れることができる。私もついこの間までは、この釣り方オンリーだったので、この釣り方に適したポイントはよくわかるのだが、私ならここに仕掛けを入れるだろうなと思うところに次々とI氏は仕掛けを投入し、次々とイワナを釣り上げる・・・。それにテンカラ釣りは、基本的には水面の表層あたりをポイントにして釣る釣りなのだが、餌釣りでは錘をつけることによって、深い底までも探ることができる・・・。

☆ ここでは完全に差をつけられてしまった・・・・。


 この後、その滝の上流に出るため、延々と崖を登る。その滝は岩場の絶壁から落ち込んでいるので、直接登ることは不可能である。そのため遠回りに山を巻いて登るのだが、先日の雨でズルズルに滑るし、ここで落ちたら一気に下までいってしまうだろうなあと思われるような絶壁の上を四つんばいで通ったり、木の根や枝をつかんでかろうじて通れる斜面をよじ登ったりと、地獄の苦しみを味わいながら、川を遥か下に見下ろす高台まで登り詰めた。ところがどうも景色が違うのである。本来なら下を見下ろすと、右手に先ほどの滝が見えて、左にその上流が見えるはずで、そう思って薮コギをしてここまでたどり着いたはずなのだが、右に見えるのはどうみても先ほどの滝ではない。そして左の谷底に見える川には、またまた別の滝が待ちかまえている。 どうも様子がおかしいが、まだまだ時間はたっぷりあるので、上流へと向かうことにした。といってもその見えている川は谷底にある。ちょっとやそっとでいけるような所ではない。先ほど登るのと同等以上の苦労を重ねて、やっと見知らぬ川底にたどり着いた。少々休憩をとってから、その川で竿を出す。だが、先ほどのポイント以上に、テンカラにとっては不利になっていた。というのは右に左に、そして上にも枝がうっそうと張りだしており、思うように竿が振れないのである。水面に毛鉤がたどり着く前に、葉っぱは釣るわ、枝は釣るわ、ひっかかって毛鉤をなくすわ糸は切れるわで、釣る以前の段階で苦労させられた (もちろんこれも『私の腕のレベルでは』という条件付きだが・・・)。  それにひきかえ提灯釣りのI氏は、順調に竿を出している。ふと見ると、釣れているようである。そしてこっちを向いて何か叫んでいる。近寄ってみると、なんとニジマスである。


 ニジマスなんて魚はなんの珍しいものでもなく、日本各地で養殖されている。北米原産の外来魚であるが、だからこそ珍しい・・・。 というのは、養殖が簡単なので各地に養魚施設があるが、日本の風土には合わなかったのか、自然繁殖しているのは摩周湖や上高地などといった、ごく限られた地域だけである。それは気温なのか水温なのか、はたまた水質のせいなのか、なぜかは知らない。ブラックバスとは大違いである。 実はでは聞いていたのだが、ここの源流のある谷には、かつて炭焼きのために数戸の民家があり、その住人がニジマスを放流したことがあるとのことである。それがなぜかその谷だけで自然繁殖し、子孫を残しているということである。そんなこと現実にあるんかいな? と思っていたが、実際に今目の前にいるのはニジマスである。こんな奥深いところに、来るだけで延々といくつも滝を巻かなければならないところにニジマスを放流するような、酔狂な人がいるとは思われない。やはり噂は本当だったのである。


テンカラ苦戦! 障害物多し・・・。


 そうなれば自らの手でニジマスを釣りたくて釣りたくて仕方がない。ひょっとしたら2度と来ることはないかもしれないこんな山奥なのだから、是非とも一匹釣りたい、という思いが相当強くなってしまった。かといって今日は絶対にしてはいけないことがある。『エサVS毛鉤』で勝負しているからには、なにがあっても毛鉤で釣らなくてはならない。というわけで、『提灯テンカラ』なるものを試してみた。道糸はおよそ1メートル。その先に自作毛鉤を結ぶ。ただそれだけの仕掛けで、水面をちょんちょんと攻める方法で対抗した。これは不利である。本物のエサと偽モノの毛鉤では勝負にならない。いかにダマすかというテクニックが勝負の分かれ目となる。「一匹でいい、釣れてくれ」と念じながら誘ったところ、バシャっと水面を割る強烈な水しぶき・・・。そして強烈な締め込み・・・。 やっぱり心臓に悪い釣りですなあ、テンカラって。抜き上げるとでっぷりと太った大きな魚体である。紛れもないニジマスであった。サイズは26センチ。先ほどI氏が釣ったものに比べたら数回りも ドデカイ魚であった。

☆ 目標達成!

26センチの天然ニジマス まるでイクラのような卵をもってました。



 その後I氏は順調にニジマスを上げていく。私も頑張ったが結局はそれ一匹であった。やはり提灯釣りはエサが強い。ただ、やっぱりニジマスは『アホ』な魚である。私が巨大なニジマスを釣ったポイントは狭いところで、バシャバシャ大暴れをさせてしまったのに、直後にその同じポイントで餌釣りのI氏のエサに食らいつくのである。そんなバカ魚なのによくもまあ今まで種を保存させてきたものである。逆にそれほどまでにどん欲でなければ、生き残ることはできなかったのかもしれない。乏しいエサを必死で食ってきたからこそ、生き残れたのかなあ。そう思うと釣るのが罪悪のような気がしてきたが、そのわりにはどのさかなもみんな、なぜかポッテリとよく肥えていた・・・・。

☆ ここでも数は負けたが、サイズはダントツで私の勝ち!



 さてそろそろ川も細くなり、もう釣りも限界かな、という様相を呈してきたので、納竿して車まで戻ることにする。情報としてこの奥には林道があると聞いていたので、谷底からその方向を目指して、またまた山登りである。もちろん、またまた崖登りや四つんばいの連続である。ところが行けども行けどもそれらしきものは一切ない・・・。そのうち薮コギもひどくなってきて、何がなんだかわからなくなってしまった。遥か遠くにかすかに川の音がするだけで、もう方角もよくわからない。なんとなく頭の片隅に、『遭難』という二文字がちらつき始めた。そうなると疑心暗鬼となり、不安は一層つのってゆく・・・。幸い時間的にはまだまだ余裕があったのでまだマシだったが、これが夕暮れでもあったらパニックになってしまうのだろう。こうやって人は山で遭難してしまうんだろうなあと実感する。


 ついに限界だと判断し、すべてを逆戻りにすることにした。あのやって来たコースを想像すると気の遠くなるような話だが、それしか方法はない。黙々と山中を彷徨する。だが、すべてを逆戻りと口にするのは簡単だが、何処を通ってきたのかわからないのである。とりあえずは谷底の川を目指せということで山を下ったが、もうあちこちひっかき傷だらけである。腰は痛いし足下はふらつくし、肩はウェーダーとザックのベルトがくい込むし、体中から噴き出した汗でウェーダーの中はボトボトに濡れてるし・・・、で目がかすんできた。やっと見覚えがあるところにたどり着いたときには、心の底からホッとした・・・。 でもただ見覚えがあるだけで、そこまで来たコースの記憶をたどれば、またまた目眩がしてきた・・・・・。 なにが楽しくてこんなことやってるんやろか?


 一時は遭難して新聞沙汰になることも覚悟したが、なんとか無事に車までたどり着いた。あ〜助かった・・・。

 ところで勝負の結果である。私のビクには体高のある良く肥えた9寸アマゴと、これまたでっぷりと太った26センチの大ニジマス(釣った中では)がおさまっている。I氏のビクには十数匹の渓流魚がおさまっている。25センチのイワナを筆頭に、そこそこのサイズがそろっている。ただ、私ほどの良型はいない(笑)。型では勝ったが、数では負けた。釣果では負けたが、釣趣では勝った(と思う)。本物のエサに針を仕込んでだまして釣るというダマシ方とエサに似せて自分で作った毛鉤で魚をだますというダマシ方では、毛鉤の方がより高級なダマシ方であろう。(勝手な屁理屈?)  でも釣るのにストレスを感じるようでは(仕掛けがひっかかってひっかかって、どうしようもない状況のようなときなど)、ストレス発散に行った釣りで、ストレスをより増幅してしまう…。そしてやっぱりなんだかんだと理屈をつけても、数少ないよりたくさん釣れた方が嬉しい・・・・。

 う〜ん、難しい・・・。とりあえず新聞沙汰にもならず無事帰ってきたので、それで良しとしましょ…。

☆ この勝負、引き分け〜〜〜〜〜〜〜。



 と、アホなことをほざきながら、温泉で腰と足をさする2人であった・・・・。



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