朱点は赤いのがお好き?


 8月も押し迫ったある日、久々に平日の休みが取れた。ということで、シーズン中の土日なら人があふれている河川へ行くことにした。その川は幅が広く入渓もしやすく、魚影も濃い。当然ながら人気があり、釣り人も多い。まあシーズン終盤ともなるとそんなには期待できないが、いい機会なので出かけることにした。


 その川は鳥取県千代川の支流のまた支流だが、夜明け前に到着し準備をしていると、一台の車が挨拶して通りすぎてゆく。そして○○地点より上手の方で釣らせてもらっていいかとことわりをいれてきた。マナーのいい釣り人である。やはり平日で人が少なければ、誰もが気持ちに余裕ができるのかもしれない。そこは私が一日釣り歩いてもたどり着かないほどのところなので、ではどうぞ、ということでそれぞれ釣り始める。


 釣り初めて早々に5センチほどの赤ちゃんイワナが釣れる。見るからに稚魚放流されたばかりのイワナである。実は今日、少々小さくても持ち帰ることを義務づけられていた。というのは、我が家には「こいつは猫の生まれ変わりか?」と思うような娘がいる。魚が大好物で、特にアマゴには目がなく、どんなに小さくても1匹は持ち帰ってくれと頼まれていた。う〜ん、どないしようかなぁ・・・と迷ったが、いくら放流物といえども、こんなにちっちゃい魚を持ち帰って食ったら、幼児虐待してるのと変わらないもんねぇ・・・・。ということで川に戻してやる。あとで後悔することがなければいいのだが・・・。 その後、同じようなサイズが何匹も釣れ、その都度悩みながらも逃がしてやる。


 そのうちパタッと釣れなくなり、川を泳ぐ魚の姿さえも見かけなくなってしまった。そうなれば先ほどのちっちゃいメダカイワナの存在が頭の中ではどんどん大きくなってしまう。そうこうしているうちに、枝に仕掛けがひっかかって毛針をなくしたり、岩から滑り落ちてウェーダーを破ったりと、悪いことが重なって起こる。そして気持ちの方もだんだんと失せてきた。そしてまたまた木の枝にひっかけて、仕掛けを作り直さなければならなくなってしまった。


 ええい。、ヤケクソや! ということでセットしたのが毛針ケースの片隅に一本だけ入れていた真っ赤な毛針。名付けて『募金する 善意の心に 福が来る(?)』 実はこの毛針、共同募金の赤い羽根でつくったものである。


 はじめて毛針の巻き方を教えてもらった頃、自分でヘタクソながらあれやこれやと巻きながら、遊び心でいろいろなものを作ってみた。そのうちのひとつがこれで、遊びで作ってはみたものの、まったく釣れる気がしなかったので、今まで使ったことはない。色にしても素材にしても、また適当にハサミで切りそろえた毛足の長さにしても、どう考えてもこんなもんに食い付くバカな渓流魚はいるはずはない。


 ということで、そのヤケクソ毛針を流れに打ち込む。 と、その瞬間、サッと白い影が姿を現し、とっさにあわせたらかなりの重量感! この一匹はなにがなんでも取り込まなければならない。慎重にやりとりしてから抜きあげる。それは26センチのきれいなピカピカのアマゴちゃんだった。


 しげしげとそのアマゴを眺めて一句・・・・・。「募金する 善意の心に が来たる」 に変更・・・・。

ピカピカ の アマゴちゃん!


 そのアマゴはぬか漬けにして持ち帰り、焼いて食べたら我が家の猫が、みるみるうちに骨だけにしてしまった。

朱点は いのが お好き?



                                                   (2006.8.30)




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