今シーズンの釣り納め

台風の影響は・・・?




 いつの間にやら暑かった夏も過ぎ、日に日に秋を感じるこの頃である。梨やブドウは美味いし、とても幸せを感じる。だが秋といえば、いよいよ渓流釣りも終盤である。近畿圏ではだいたい9月末で終了となる。そして翌年の3月まで、渓は静かになる・・・・。


 今年は解禁当初に何度か雪深い渓に足を運んだだけで、新緑のヤマメの渓も真夏のイワナの渓にも行けずじまいだった。このままでは心残りなので、友人のI氏を誘って今年度の渓流釣りの締めくくりをすることにした。本当は春先に一緒に行った若くて美しい女性のNさんと行きたかったが、どうしても都合がつかないということだから仕方がない。やむを得ず悪友のI氏と一緒に、私の遊び専用車「K-1」でイワナの渓へと出発する。


 出向いたのは、鳥取県を流れる千代川の、とある源流域である。延々と車で林道を走り、車を止めてからは谷底まで山道を歩く。もちろん帰りはその道を登らねばならない。藪コギや岩登りは当たり前、といった秘境である。熊さえも恐れをなして近寄らないと言われるぐらいの難所で、今年最後の渓流釣りには最適の場所である。


 実は今回の釣行で、試してみたいことがあった。それは今回使用する竿のことである。今年の解禁当初、雪に足を取られて転んだときに、不覚にも無惨に愛竿を折ってしまった。それは決して高価なものではないが、長年使ってきた愛着のある竿だった。業者に修理を依頼したが、もう生産してないので部品がなく修理不可能と言われた。しかし捨てるのは忍びなく、倉庫の隅にそのまま置いていた。


 先日その倉庫をゴソゴソしていたが、その竿よりさらに以前に使用していた竿が見つかった。もう15年ほど前に使っていたもので、ダイワの「早春」という名の竿である。これも同じく折ってしまったのだが修理がままならずでも捨てるに捨てられずの状態で放っておいたものだった。この竿は渓流釣りをはじめて最初に買ったものである。友人のI氏が5.4mの竿だったので、それより長いという理由だけで選んだ6.1mのものである。当時は(今も?)渓流釣りに関して全く無知で、そして経験も乏しく、「短いより長い方が勝ち!」ぐらいにしか考えていなかった。実際は、狭い小河川では長すぎる竿はもてあますし、また一日中竿を振る渓流釣りでは、少しでも軽い方が有利である。だが当時の私はどんな藪沢でもその竿とともにあり、そして数多くの渓の宝石を釣り上げ、時には尺を越えるヤマメやイワナがその竿を軋ませた。


 そこでふと閃いたのだが、この2本の竿を組み合わせることはできないだろうか? もちろんメーカーも違うし長さも違う。竿の性質だって全然違うのだが、このたわいもない馬鹿げた思いつきを実行してみた。するとなんと、見かけだけは何の違和感もなく組み合ったのである! もしこれが実用に耐えられたら、私にとっては長年の思い出が染みこんだ、最高の竿になるはずである。 今回の釣行の目的は、この竿を試してみようということも含んでいた。




 朝3時に起き、釣り場へ急ぐ。3連休の3日目である。先行者がいれば、すべては台無しになってしまう。高速道路をとばし、そして順調に目的地に着く。仕掛けをセットして、まず第1投・・・。いきなりガツンと竿先がひったくられる。心臓がビクンとするが、なんせリサイクルの継ぎ足し竿である。どの程度耐えられるか信用できない。無理をせず優しく丁寧に、そしてなおかつ竿の具合をチェックしながら、そっと抜きあげる。25センチほどの精悍な面構えのイワナである。なんともさい先のよいスタートだ。竿もどうやら使えそうだ。25センチの獰猛な天然イワナを釣り上げられるなら、まあ、一通りのことは大丈夫だろう。

第1号のイワナ と ダイワの再生早春


 しばらく進むと、ここぞという大場所にたどり着いた。大きな落ち込みがあり、その左右には巨大な岩が並び、その下は大きくえぐれている。イワナにとっては格好のすみかである。きっと大物が潜んでいるに違いない。落ち込みの脇から岩のえぐれに向けて、そっと餌を流す。するとグゥーッと重たく押さえ込むアタリ・・・。直感で、これは大物だと察した。しっかりと竿の弾力でタメを作りながら、慎重に、かつ大胆に・・・。

 釣り上げたのは、尺にわずか1センチ足りない「泣き尺」岩魚だった。もうこれは尺物といっていいだろう。(I氏は絶対にそうは認めないだろうが・・・・。)新生「早春」は、見事に尺物をも制したのである。

泣き尺イワナ

これが仕留めたポイントです!


 そしてついに今回最大の大場所、U滝の滝壺にやってきた。かつてここでは9寸のアマゴをテンカラ釣りで仕留めたこともある。さて今回は・・・・。

 そっと仕掛けを放り込むと、来た来た来た〜っ! 気合いを入れて抜きあげたら、木の葉のようなヤマメが宙を舞った。なんとまあ、5センチほどの赤ちゃんであった。「なんでこの大場所でお前やねん!」と思いながらも、来年また会おうねと言って、川にお帰りいただく。気を取り直して、今度は深めに餌を沈ませる。うん、ググッ、来た〜! 今度は25センチ級の、紛れもないイワナだった。オレンジ色の腹が鮮やかな見事なイワナだった。魚籠に取り込み、すぐさま仕掛けを放り込む。 また来たっ! 今度は同サイズながら、白っぽい上品な姿のイワナだった。何となくキスのような、貴婦人をイメージさせる姿だ。同じイワナでも、こうも違うものだ。これも取り込んで、すぐさま仕掛けを入れる。すると・・・・。

これがU滝


 結果的に、なんと4本の良型イワナがたてつづけに釣れたのである。まるでカツオの一本釣りのように。我ながらこれは圧巻であった。I氏は、ただただポカンと口を開けて見とれていた・・・・。

悪友の  氏




 今回の釣りは非常に充実していた。実は台風15号の影響もあって、直前まで行くべきか行かざるべきか、また行くならどの川に行ったら釣りになるか、さんざん迷っていた。台風による雨や増水、そして鉄砲水・・・。悪いことばかりが頭をよぎる。そして相談の結果、岡山の某河川に行くことに決定した。ところが前日の夜に、この鳥取の川で大物を釣るを見たのだ。夢のお告げを信じて行動したらこの結果で、急遽予定変更したおかげで、とってもいい釣りができた。これで気持ちよく、今シーズンを終わることができる。

さて、今日はその魚を肴にして一杯やるか・・・・。
                                                   (2011.9.20)