イワナの初物


 


 渓流釣りが解禁になってから、はや1ヶ月近くが経過した。今年は記録的大雪のため、解禁当初の釣りは、現実的には不可能であった。私は毎年、初釣行は中国山脈のとある渓に行くことにしているが、そういった事情で今年はまだこの川には行けていない。3月も終盤になって、やっと訪れることができた。


 私がホームグランドにしているこの川では、実に様々な出来事があった。人生初のイワナを釣ったのはこの川だし、いい釣りをしながらも一番の大物を釣り落としたのもこの川である。また足を滑らせてひっくり返り、手をついた際に指を脱臼したこともあれば、非常にうら若き女性と二人っきりで釣りを楽しんだのもこの川である。さて今回はどんな出来事が待っているのだろうか。


 まだまだ雪がたくさん残っており、水温も非常に低いと思われるので、朝はやや遅めに出発する。現地に着くと案の定、雪は1メートル近く残っている。おまけに今も降り続いている。ズボズボと、膝どころか太ももまで雪に埋まりながら、必死の行軍でやっと川べりにたどりつく。なんともまあ、疲れる釣りだ。例年この時期は残雪の中を釣るのは当たり前だが、ここまで足を取られることは滅多にない。たどり着くだけで、もうゼイゼイと息が切れてしまった。でもこの雪のおかげで、誰も釣りをした様子がない。この雪が釣り人を阻んでくれていたのだ。きっと大物が釣られずに残っているに違いない。案の定、釣り始めてしばらくすると、待望のアタリがあり、やりました、第1号! ややほっそりとはしているが、待望の今年度第1号イワナである。今年も順調に釣れてくれて有難う。大切に扱い、そして魚籠に収めた。

やったね! 本年度のイワナ第1号。

獰猛そうな作州アマゴ・・・24cm


 しばらく釣りのぼると、今回最も期待できる大場所にやってきた。かつてここで尺に近いイワナを釣ったことがある。でもそれ以降、何度もバラしが続き、地団太踏んで悔しがったところでもある。久々にここで大物を仕留めてやるぞ!と気合を入れる。そして、ここぞというポイントに餌を投入する。そして静かにアタリを待つ。来たっ! 感触からはそれほど大物ではないが、確実にヒットした。慎重に落とさぬように取り込む。かつて目の前でポトンと落としたことが頭をよぎる。落としても大丈夫な所へ引きよせ、確実に手にした。そんなに大きくないなと思ったものの、実際には24センチの立派なアマゴであった。やったね、久々にこの場所で大物を手にした喜びに浸っていた。そして次のポイントへ移動する。先ほどのポイントのすぐ上手である。こんなに近くにはいないかなあ、とは思いながらも、潜んでいそうな場所に仕掛けを投入する。すると予想外にアタリがあり、抜きあげるとこれまた立派なアマゴである。先ほどのアマゴとは違って、かなり大柄なパーマークを身に纏っている。人間の指紋と同様、2匹として同じ模様は無いらしいが、この模様は美しい。そしてところどころ散りばめられた朱点が、ヤマメとの違いを主張している。個人的にはシンプルなヤマメのほうが好きなのだが、朱点のあるアマゴは、これはこれで美しい。渓の宝石という言葉は、決して誇張した表現ではない。これは釣り人しか知らない「美」かもしれない。また何かの書物で読んだのだが、「作州アマゴは旨い」と定評があるらしい。今晩はこれを肴に一杯やるか・・・。


 そして釣りを続行し、今回最後のポイントへさしかかった。川はまだまだ上流へと続くが、この雪ではもうこれ以上進むことは不可能である。このポイントで今日は竿を納めようと決め、そっと餌を放り込む。静かに流し、このあたりに潜んでいるはずだと思うまさにその場所で、ガツンと食いついた。締めくくりとしては最高の、自分で描いたシナリオ通りの状況になった。そして釣れたのはいかにも天然ものであることを強烈に主張するかのような、鮮やかなオレンジ色のヒレや腹のイワナである。身長は22センチほどであったが、とても肉付きのいい体格をしていた。

鮮やかな大きなパーマーク・・・22cm

本日の締めくくりのイワナ君・・・22cm


ここが今回の釣行の締めくくり・・・・。



 帰りは旧大原町の宮本武蔵の生誕地にあるクアハウスで疲れを癒す。本当は粟倉温泉の元湯に入りたかったのだが、なんと昨年秋で営業を終了したとのことだ・・・・。ひなびた温泉は素晴らしいのだが、やはり経営面では厳しいのであろうか。人が多けりゃ多いで風情に欠けるが、少なければ少ないで経営に支障が出てしまう。なかなか世の中、思うようにはいかないものだ。


 釣った魚は合計4本。いま流行りの「塩麹」をつけて焼くことにする。前回の釣果もそうしたのだが、これがすこぶる旨い。これを肴にうまい酒を飲んだらきりがない。こうして今回の作州釣行は、無事終了したのであった。
 




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